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「ボクハ・キミガ・スキ11(昴x新x少年)」
ぼくの胸の中にいる昴さんの体は相変わらず小さかった。
できることならこの小さな体を抱きしめてしまいたい。
こんなに近くにいるのに
こんなにこの人のことが大好きなのに
想いを伝えることができない。
そう…だめなんだ。
この人には好きな人がいる
「あなたが好きです」と想いを伝えても、この人を困らせてしまうだけ
だからぼくは本当のことは絶対に言ってはダメなんだ。
「はいそうです。ぼくには好きな人がいます」
「…そうか」
「でもぼくの片想いなんです。その人には他に好きな人がいるから…だから時間はかかるだろうけれど、
ぼくはその人のことを諦めなくちゃいけないんですけどね」
「そう…なのか?」
「昴さんもでしょ?」
「えっ?」
「昴さんも好きな人がいるんでしたよね」
「…うん」
そう言いながら自嘲気味に笑う昴さんはとても寂しそうに見えた。
片想いこそ永遠の愛情
あの時の昴さんの言葉。
確かに想いを伝えなければ愛情は永遠に続く。
想いを受け入れてもらえず失恋して辛い思いをすることもないだろう。
好きな人と喧嘩をすることもなければ別れることもない。
綺麗な愛情は壊れることなく美しい形のまま
でも想いを相手に伝えなければ、その人との楽しいことや嬉しいこと、そして愛し合う喜びさえ全てを諦めてしまうことになるんだ。
愛する人と一緒に居られない一人きりの寂しい世界で綺麗な愛情を抱きしめている昴さんはずっと独りで…
そんなの寂しくて哀しいじゃないか。
好きな人には幸せでいてほしい
いつだって笑っていてほしい。
その隣にいるのがぼくじゃないとしても
ぼくの願いは変わらない。
もし昴さんの想い人に他に好きな人がいないというのなら最初から全てを諦めないで欲しいんだ
「昴さんはその…片想いの相手に自分の気持ちを伝えたりはしないんですか?」
「以前それとなく伝えたことはあるけれど相手にはまったく伝わらなかったみたいだ」
「そうなんですか?あ…あの、こう言っちゃなんですけど、相手の方は結構鈍い人なんですね?」
「そうだね。超が付くほどの鈍感だ。時々殴り倒したくなるくらいにね」
「あいたっ!」
憎々しげにそう言いながら何故か昴さんはぼくの頭を平手でバチンと叩いた。
ヒドい…完全な八つ当たりである。
「あの、昴さん。ぼくもどちらかといえば鈍い方だと思うんですけど、
そういう人間には言いたいことはハッキリと言葉にして言わなくちゃ真意は伝わりにくい思うんです」
「……」
「確信には触れない言葉を投げ掛けて後は察しろじゃ、何かの謎掛けみたいで、言われた方は困ってしまいます」
「君もなかなか言うようになったな」
「あ、ごめんなさい」
「いや、君の言う通りだと思う。今まで自分の好意は態度に表して相手に伝えていたつもりだけれど、それじゃダメなんだな」
「昴さん…」
「自分の心の中は相手には見えない。見えないからこそちゃんとした言葉で自分の気持ちを相手に伝えないといけなかったのに」
先程叩かれたぼくの頭に小さな手が伸ばされた。
ポフポフ撫でられる感触があまりにも優しくて泣きたくなってしまう。
「さっきはごめん。痛かっただろう?」
「大丈夫。もう痛くないですよ」
「うん。ごめんね」
ぼくを見つめる昴さんの瞳には先程のような暗い陰りはなかった。
今までのモヤモヤを振り払ったかのような強い意志を感じさせる綺麗な瞳。
良かった。
告白はきっと上手くいくだろう。
万が一上手くいかない場合もあるけれど…そういう余計なことは今は考えないようにする。
「じゃあ昴さんぼくはもうそろそろ帰りますね」
「……」
「昴さん?」
告白を決心したのなら、もうぼくがここにいる理由はない。
挨拶をして帰ろうとしたけれど、昴さんはぼくに抱きついたまま、その手を離してくれないんだ。
「…るな」
「えっ?」
「帰るな大河新次郎。僕は君に伝えたいことがあるんだ」
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